流儀は勇壮な舞い振りから、武道の流れをくむと言われる古流小笠匍南獅子(はいじし)です。雌雄の二頭からなり、それぞれ遣(つか)い手が二人、太鼓打ち (子供) 三人、裏打ち三人、擦鉦(すりがね)二人、笛一人の十三人で構成されています。
獅子頭は150年程前の高松の伏見伊八郎の作で目・耳・口が活発に動く表情豊かな黒毛乾漆の毛獅子です。獅子の着物 (油単) は雌雄同じで、赤のラシャ地に金と男で縫い取りされた豪華なものです。
太鼓打ちは崇絹子の上衣を着け、ズボンをはき、赤と白の襲の肩飾りをつけ、腰には兵児帯(へこおび)を結び、赤の前垂れ、頭に鉢巻きを結んだ唐様といわれる中国風の衣装を身につけます。またその背には船越八幡宮の大祭に行われる鳥喰神事(おとぐいしんじ)の烏が刺繍されています。獅子頭と着物 (油単(ゆたん)) を合わせると約十キロの重さがあり、獅子遣いは身体全体の力と強い精神力が必要とされます。
獅子舞は三段に分かれ舞いが行われます。
一段は天の舞い、浄祓(きよめはらい)の舞いといわれ、太鼓打ちは神前に向かい、打ちを太鼓の天に構え、雌雄の獅子は神前にぬかずいて構えますじ神笥せの太鼓にはじまり、四方固めの舞より入り、演舞の場を祓い浄め狛犬の姿となり終わります。
第二段は地の舞い、祈願の舞いといわれ、中太鼓により天地の平和、五穀豊餞を祈願し、また脇太鼓は自分の身に起こる禍を避け、平和と豊かな営みを表現し、家内安全、一家の繁栄を祈願します。
第三段は人の舞い、獅子は天を仰ぎ、天の神徳を称え、伏して地の神の顧みに感謝して神前にぬかずき、神威に服して舞いは終了します。
演技時間は約25分程を要しますが、舞は緩やかに、時に激しく調和のある格調高い気品のある舞いで、雌雄の顔あわせ狛犬、唐子の獅子追い、雌獅子の背返りなどは一番の見所です。
家の浦二頭獅子舞は昭和29年8月に香川県無形民俗文化財に指定され、現在、家の浦二頭獅子舞保存会によって保存継承され、毎年、十月の第一日曜日に船越八幡宮祭、十月十日に家の浦大将軍神社で公開されています。(新編:仁尾町の文化財より)
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