「ライト&ライフ」四国電力発行 2005/9月号 にて紹介されたページを保存したものです。


ジャンピングふるさと

香川県 仁尾町

歴史の町並みをきらびやかに飾る【八朔(はっさく)人形まつり】

   
店の土間や座敷に作られた箱庭のような舞台。有名な戦の場面やお伽話の
世界を演出するのは、勇ましい武者や美しい女御の人形たち。
それらを一つひとつ鑑賞しながら巡るのは、何とも楽しい。
今年もまちのあちらこちらで、奥ゆかしい美の競演が繰り広げられる。

一際注目を集めた詫間電波工業高等専門学校の生徒らによる「かぐや姫」

一際注目を集めた詫間電波工業高等専門学校の生徒らによる「かぐや姫」。
巧妙なからくり仕掛けで、かぐや姫が月に帰るシーンを動的に演出した

再び蘇った絢爛豪華な八朔行事

  八朔とは、8月朔日(旧暦8月1日)の節日に行われるハレの行事。もともとは室町時代の頃、「憑(たの)み」などと称して、心に頼み思う人に馬などを進物するようになったのが始まりともいわれる。そうした武家社会の儀礼が一般化してか、瀬戸内の讃岐地方などを中心に、新しく男の子が誕生した家では、新米を使って団子馬を作り、飾る慣わしとなった。
  ところが、ここ仁尾町の八朔はまるで座敷雛のよう。そこには、特異な歴史的背景があってのこと。領主細川頼弘公の居城であった仁尾城は、天正7年(1579)3月3日、土佐の長宗我部軍の侵攻を受けて落城、頼弘公は自刃。以来、領主の命日にあたる3月3日を避け、八朔に男子の節句と一緒に女子の雛節句も行うようになったと伝えられる。
  仁尾は、古くから京阪神と結ぶ港町として栄え、江戸末期の頃には丸亀藩や土佐藩などから、酒、醤油、酢、茶などの特産品を商う免状も与えられ、大いに繁栄した地。細く入り組んだ路地やどっしりとした商家の構えなど、往時の姿を今に留めている。
  30年ほど前までは、どこの家でも男の子が生まれると八朔人形を作り、舞台を設けて、近所に披露してきた。しかし、座敷一間を潰して舞台にしたり、室内に池を作ったりと派手さを競い合うようになり、費用も手間も莫大。さらに、核家族化など住宅事情も様変わり。八朔人形の慣習は徐々に廃れていった。    このままでは、ふるさとの貴重な伝統が失われてしまう。なんとかもう一度復活させて、まちの活性化にと、商工会のメンバーが中心となって「八朔人形まつり」を計画。各家に眠っている古い人形を探し出したり、展示場所を確保したりと難儀しながら、平成10年、やっと開催に漕ぎ着けた。

民家の軒先にも雛人形が飾られ、そぞろ歩く人々を和ませる

民家の軒先にも雛人形が飾られ、そぞろ歩く人々を和ませる

「人形工房」ではボランティアの指導のもと紙・布人形作りも体験できる

「人形工房」ではボランティアの指導のもと紙・布人形作りも体験できる

子供からお年寄りまで、町内みんなが参加

臨場感溢れる舞台作りをするボランティアスタッフ

臨場感溢れる舞台作りをするボランティアスタッフ

仁尾中学校美術部の生徒たちは『枕の草子』をモチーフに選び、移ろう四季の美しさを見事に描き出した

仁尾中学校美術部の生徒たちは『枕の草子』をモチーフに選び、移ろう四季の美しさを見事に描き出した
  まつりの3ヵ月ほど前になると、商工会内に企画部・総務部・展示部などが設けられ、出し物の選定から舞台設定の考察や時代考証まで行う。もちろん、油絵同好会はじめ町内のボランティアグループの協力も欠かせない。
  そうして、本番の一週間ほど前になると舞台作り。「一週間だけ我慢してつかー」。店の車庫を借りて、土台を作り、土を入れたり、苔を敷いたり、木を切って入れたりと、すべてボランティアで材料を調達し、協力しながら仕上げてゆく。
  仁尾中学校の美術部も毎年参加する。自分たちで舞台設定を考え、夏休み前から下絵描きをスタート。夏休みに入ると本格的に背景を描き、舞台を仕上げる。昨年は、時間の流れを感じられるものにと、選んだのは「枕の草子」。春は曙、夏は夜、秋は夕暮れ、冬はつとめて・・・と、一つの背景を四季に描き分けた。
  こうしてできた舞台は、20ヵ所ほど。一巡り約2kmのコースが設定され、スタンプラリーが行われる。さらに、そのうちの3ヵ所では、「語り部」が舞台を案内してくれる。ボーイスカウト、老人会、ボランティアグループなど様々なメンバーで構成される「語り部グループ」は、講習会を経てデビューし
た。さらに、舞台だけでなく、幼稚園児〜中学生までが作った愛らしい人形も、まちのあちこちに飾られ、まつりを盛り立てる。
  こうした町民あげての手作りの姿勢が評価され、平成15年には総務省所管の「第7回ふるさとイベント大賞」受賞の栄誉に浴した。
 「来春には、近隣7町が合併して新たに『三豊市』に生まれ変わりますが、昔からこの地に培われてきた由緒あるこの伝統文化を、後世にしっかりと残し、伝えたい」と語る、仁尾町商工会の岡田旭倫事務局長。
  燧灘に煌く初秋の陽光を浴びながら、雅な人形が演じる物語の世界をじっくりと堪能したい。

源 頼朝が行った「富士の巻狩り」で高名をあげる仁田四郎 常忠

「天の岩戸」から現れる天照大神

大国主命(おおくにぬしのみこと)が助けた「因幡の白兎」

八朔人形は神話や歴史の名場面が題材にされる。
(左上)源 頼朝が行った「富士の巻狩り」で高名をあげる仁田四郎 常忠
(右上)「天の岩戸」から現れる天照大神
(左下)大国主命(おおくにぬしのみこと)が助けた「因幡の白兎」

香川県 仁尾町
●関連情報
今年の「仁尾八朔人形まつり」は、9月23〜25日開催予定。

●お問い合わせ
仁尾町商工会
TEL 0875(82)2345

仁尾町地図

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